| 【大任町のIR誘致――田川の未来を、何を根拠に決めるのか】
大きな可能性を語る前に、私たちは何を知り、何を検証できているのか

大任町が進めるIR(カジノを含む統合型リゾート)誘致が、田川地域にとって大きなテーマになっています。
大任町は、10月中に福岡県へIR誘致を申請し、12月の県議会で判断を求めたいとしています。
国のIR区域整備計画の新たな申請期間は、2027年5月6日から11月5日までとされています。
つまり、今後、福岡県としてIR誘致について判断するための時間は、決して長くありません。
だからこそ、私は今、この問題について一度立ち止まって考える必要があると思っています。
「賛成か、反対か」の前に確認すべきこと
私は田川郡選出の県議会議員です。
田川の未来に関わる巨大構想だからこそ、まず必要なのは「賛成・反対」ではなく、事実と根拠の確認だと考えています。
IRによって本当に田川に雇用が生まれ、人口減少に歯止めがかかり、地域経済が再生するのであれば、私はその可能性を最初から否定するつもりはありません。
実際、大任町は、IRによる経済波及効果を約1兆円、カジノによる県の税収を約450億円と試算しています。
これは田川にとって非常に大きな数字です。
だからこそ、私は聞きたい。
その数字は、どのような前提条件で算出されたのか。
本当にその規模の施設が実現可能なのか。
その経済効果は、田川地域にどの程度還元されるのか。
そして何より、
福岡県として、その数字を独自に検証しているのか。
ということです。
福岡県に、まだ正式な資料は届いていません。
私は、この問題について福岡県に確認しました。
江口勝副知事に直接お尋ねしたところ、10月1日現在では福岡県には相談も提案もないとのことでした。
「大任町からカジノを含む統合型リゾートに関する文書やデータの提出はなく、協議、相談等も行っていないため、開示請求に係る文書は存在しない」
というものでした。
これは、大任町がIRについて何も検討していないという意味ではありません。
大任町として構想を検討し、地域に説明していることは承知しています。
しかし、少なくともその時点で、福岡県との正式な協議・相談や、県に提出された資料が存在していなかったということです。
一方で、大任町は10月中の県への申請、そして12月の県議会での判断を求めています。
私は、ここを県民の皆さんにも考えていただきたいと思っています。
12月までに、県は何を検証するのでしょうか。
IRは、単に「大きな施設を造れば経済効果が出る」という話ではありません。
もし福岡県が本気で田川の将来を託すのであれば、少なくとも次のことを検証する必要があります。
�� 経済効果・税収・雇用
示されている数字は本当に実現可能なのか。
どれだけの雇用が生まれ、そのうち田川地域の雇用はどれくらいになるのか。
�� 財政負担
道路や上下水道などのインフラ整備を含め、県や市町村にどのような負担が生じるのか。
�� 交通インフラ
想定される来訪者を、本当に道路や鉄道などで受け入れられるのか。
�� 治安・ギャンブル依存症対策
カジノを伴う以上、治安対策やギャンブル等依存症への対策をどうするのか。
�� 医療体制
人口や来訪者が大きく増えた場合、救急・医療体制は十分対応できるのか。
�� 福岡県としての独自検証
大任町が示す資料をそのまま受け取るのではなく、県として独自に検証するのか。
私は、ここが一番重要だと思っています。
「国への申請が来年5月だから、12月に判断する」ということについて
12月の県議会で判断を求める理由として、来年5月から国への申請期間が始まることは理解できます。
しかし、
「申請期限があること」と「十分な検証ができていること」は、別の問題です。
だからこそ、県議会で判断するのであれば、
12月までに何を調査するのか
誰が検証するのか
どこまで検証できるのか
その結果をいつ県議会に示すのか
県民にどう説明するのか
を、まず明らかにする必要があります。
私は、12月という時期そのものを問題にしているのではありません。
12月に、私たちは一体「何を根拠に」判断するのか。
そこを問題にしています。
「IRに反対するなら、代わりに何をするのか」という議論について
IRについて議論すると、
「IRに反対するなら、田川はどうするのか」
という話が出てくると思います。
しかし、私は「IRか、それ以外か」という二者択一で考えるべきではないと思っています。
田川には、IRだけが地域再生の選択肢として存在しているわけではありません。
人材を育てること。
若い世代が地域に残り、働くことのできる産業を育てること。
地域企業の成長を支えること。
農林業や観光、文化など、田川が持つ資源を生かすこと。
交通や医療など、地域で暮らし続けるための基盤を整えること。
私は、こうした複数の選択肢について、効果とコスト、リスクを比較しながら、田川の将来を考えるべきだと思っています。
大きな構想だから良い。
大きな経済効果が見込まれるから良い。
というだけで決める問題ではありません。
私は、賛成・反対を決める前に、まず事実と根拠を検証します
地元では、政界・経済界を含め、IR誘致に期待する声があることも承知しています。
田川地域の再生を願う気持ちは、私も同じです。
だからこそ私は、賛成・反対を先に決めるのではなく、まず事実と根拠を検証したいと考えています。
もし、
「これだけの雇用が生まれる」
「これだけの経済効果がある」
「これだけの税収が見込める」
「これだけのインフラ整備で対応できる」
「治安や依存症対策も十分にできる」
「県や市町村の財政負担も合理的に抑えられる」
ということが、客観的な資料と検証によって確認できるのであれば、その可能性を正面から評価すべきです。
逆に、数字の前提に無理がある、必要なインフラや財政負担が過大である、地域への効果が限定的であるなどの問題が明らかになれば、それも県民の皆さんにきちんと示して判断しなければなりません。
田川の未来だからこそ、事実と根拠で判断したい
私は、IRを最初から否定しているわけではありません。
しかし、田川の未来を左右するほど大きな構想だからこそ、
「大きな夢だから賛成」
「カジノだから反対」
「周りが賛成しているから賛成」
という判断でもいけないと思います。
必要なのは、
何が分かっているのか。
何がまだ分かっていないのか。
そして、誰が、どこまで検証したのか。
それを明らかにすることです。
私は、田川郡選出の県議会議員として、この問題を曖昧な空気や勢いで判断するつもりはありません。
大きな可能性があるなら、その可能性を数字と根拠で示してほしい。
大きなリスクがあるなら、そのリスクも隠さず示してほしい。
そして、福岡県として責任を持って検証してほしい。
田川の未来を決めるのであれば、まず私たちが「何を知っているのか」「何をまだ知らないのか」を明らかにすることから始めるべきだと、私は考えています。
2026.10.6 |